研究概要 |
岐阜大学流域圏科学研究センター高山試験地の冷温帯落葉広葉樹二次林(高山サイト)では、微気象学的手法によるNEPの長期モニタリングが行われており、2.37±0.92tC ha^<-1>yr^<-1>の吸収となっている(1994-2002, Saigusa et al.2005)。一方で、この森林のバイオマス成長量は地下部を含めても0.3tC ha^<-1>yr^<-1>(1999-2003)に過ぎないという(Ohtsuka et al.2007)。カンバ類を中心とする高山サイトのような二次林では、二次遷移の進行に伴い、現在優占する樹木の多くが枯死して、系内の多くの炭素は大型木質リター(CWD)プールを経て土壌有機物(SOM)プールへと蓄積していく。このように森林生態系の炭素循環を考える上で、今まであまり注目されてこなかったCWDの動態は非常に重要である。そこで高山サイトにおいて、枯死によるCWD生産量と、CWD分解によるCO_2放出量を定量的に評価して、CWDプールの動態を明らかにすることを目的として研究を行った。1haの永久方形区において、1999年から現在まで直径5cm以上の樹木の生残を毎年調査し、樹木枯死によるCWD生産量を推定した。このサイトは、成熟した先駆性のカンバ林であるためか、平均して毎年20本以上の樹木が枯死し、CWD生産量は約1tC ha^<-1>yr^<-1>に達した。また、CWDの分解速度は樹種や腐朽段階、地形的な場所などによる空間的な変動が大きいので、密閉チャンバーを使ったアルカリ吸収法により、現場で多くのCWDの分解速度を測定する手法を開発した。現在の林床のCWDプールの全量調査と、温度依存的なCWD分解速度に基づいて永久方形区内でのCWD分解フラックスを推定した。
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