研究概要 |
極域における超高層大気温度の高度分布の自動定常観測を最終目標として、高出力ナトリウムライダーの送信パルスレーザの開発・基礎研究を行う。このレーザはナトリウム層(高度80-110km)観測に用いられ、Nd:YAG結晶から生じる1064nmレーザ発振と1319nmレーザ発振の和周波により589nmのパルスレーザを発振する方式である。フラッシュランプ励起Nd:YAGレーザを用いたナトリウムライダー用レーザを元に、新たなレーザ励起方式であるLD励起型を採用したシステムを構築し、高出力化レーザの実証実験を行った。平成20年度までは、レーザダイオード(LD)を用いたサイドポンプ型と呼ばれる励起方式のレーザによりレーザ発振実験を行って来た。これをエンドポンプ型に改良し、実験を行っている。 (1)高繰り返し(1kHz)のNd:YAGレーザの1064nm, 1319nmのパルスレーザの和周波をとり、3W以上の589nm出力を得た。(2)808nmLDによる効率的な励起方式のため、余熱が少ない効率的なレーザ発振が可能となった。このため、レーザ冷却は完全空冷で、冷却水の循環を一切必要としない。(3)熱源となるLD光源をレーザ光学定盤の外部におき、ファイバーによりレーザ結晶まで光を導く方式で、大きな熱的安定性が得られた。(4)レーザビーム品質はTEMOOモードのガウシアンビームで、m^2<1.2以上を実現した。 これらの成果は、従来のナトリウムライダー用送信レーザの性能を上回る。今後は種レーザを導入し、ライダー送信系として完成させる。
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