研究概要 |
平成19年度は、岐阜大学流域圏科学センター高山試験地(北緯36度8分、東経137度26分、標高1342m)に隣接する市営岩井牧場において土壌呼吸速度の測定を行った。この放牧草地はシバ(ノシバ・コウライシバ)が主な植生を占めている山間地草原で、毎年繁殖用のメスの飛騨牛を5月〜10月の間放牧している。 測定は平成19年5月〜12月の間で約一ヶ月おきに、CC法(Bekku, et. al.,1995)とVaisala法の二つの方法で行った。その結果、土壌呼吸速度は基本的に気温の変化と同様な季節変化をしており、夏に高く、冬に低い傾向が見られた。最高値は8月に867.7mgCO_2m^<-2>h^<-1>、最低値は12月に16.9mgCO_2m^<-2>h^<-1>を示した。一方、土壌水分と土壌呼吸速度の関係を見ると、7月から8月にかけて土壌水分が低下している場所と逆に増加している場所が認められたが、7月と10月のデータに注目すると、負の相関(R^2=0.66)が見られた。さらに得られたデータを基礎に温度-呼吸曲線を作成すると両者の間には指数関数的な相関が認められ、その式からQ_10値を求めた。8月のQ_10値.に注目すると、Q_10の通常値と言われる2.0を下回っており、8月は最も土壌呼吸速度が高い時期であるにも関わらず、呼吸の温度感受性が低いことが示唆された。一方、Q_10値について8月と9月を比較すると、9月の方が1.2倍高い値を示し、R_0値は8月の1/3まで減少していた。午前中の気温はほぼ同じにも関わらず、土壌呼吸速度がこれだけ違っているので、土壌内の根バイオマスの量や活性、あるいは土壌微生物量が8月から9月間で大きく変化したと考えられる。
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