前年度までに、古大気保持試料としての石筍からの希ガス抽出と生成および四重極質量分析計による迅速な希ガス元素組成分析が可能になった。石筍試料中の過剰大気成分を除く水包有物溶存希ガス成分は20-30℃での溶解度と矛盾しないこを確認した。本年度においてはさらに、このシステムをテクタイトや火山ガラスなど包有物として古大気を保持している試料の分析にまで応用することを試みた。海南島産のテクタイトを真空中で破砕し形成当時に保持されたであろう希ガスの元素比を分析した。軽希ガスであるネオンは拡散によって選択的に気泡中に濃集しており、その特徴はミョンノン型のテクタイトに特有の物であることがわかった。今後は気泡の体積などを精密に見積もる手法を確立し.保持されている古大気の全圧を見積もることにより、テクタイト形成条件の制約などを得ることが出来ると期待される。このように、本研究を通じて確立した石筍をはじめとする水包有物や気泡中のガス抽出と生成および分析技術を用いることによって、試料が形成しそれら包有物を得た時代の地球表層の環境や試料の形成環境に関する見地を得ることができることを示すことが出来たと考えている。
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