研究概要 |
人為的環境変化を受けやすい汽水域において、殻体から取り出せる情報を明らかにし、環境モニタリングに二枚貝を利用しすることを目的に、(1)モデルフィールドである中海・宍道湖の水質環境を把握するための野外調査および二枚貝の野外飼育実験により、様々な環鏡下で生育した貝殻試料の入手し、(2)室内飼育実験により、ヤマトシジミ殻体の成長停止線と環境変化との関係について明らかにした。(1)では、森山堤開削事業に伴う汽水域生態系モニタリング調査を継続的に行い、西部承水路撤去に伴う環境変化を観測した.また,中海湖心に設置されている長期設置型水中ビデオにおいて低気圧に伴う風速に対する湖底の動態を解析した。さらに、本研究費で作成した調査台船を9月に中海本庄工区の堤防開削予定地点付近に設置し、中海の定点観測を開始した。この調査台船と、宍道湖及び中海にある湖心観測点建造物を用いて、塩分勾配のある地点と水深にそって、標識を施した二枚貝(ヤマトシジミなど)を飼育し、毎月の成長生残状況を記録した。(2)数時間〜数日スケールの環境変化を再現した室内飼育実験を行った。給餌量・塩分・水温・溶存酸素・硫化水素濃度および炭酸塩濃度の環境要因を変化させた条件で、二枚貝(ヤマトシジミなど)を室内飼育し環境ストレスに対してどのように殻体の成長停止線が形成されるか、を明らかにする室内実験を行った。無酸素下で飼育した場合、成長停止線は、無酸素状態が12時間〜1日以上継続すると形成されること、硫化水素を含む無酸素環境では貧酸素による成長停止線とは明らかに異なる成長停止線を形成することなどが明らかとなった。これにより、ヤマトシジミ殻体を用いた環境モニタリングの実用化可能性が高まった。
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