研究概要 |
本研究ほ、地域社会の中に,大学等の高等教育機関を中核とし、学校、市民組織、社会教育施設など、多様な主体間のネットワーキングと協働を通じて、学校教育を中心とした公的教育と、社会教育や市民活動を通じた学びなどを含む非公的教育を包括した「持続可能な発展のための教育」(Education for Sustainable Development:ESD)のシステムモデルを構築し、その過程を実践的に研究することを目的とする。研究方法としては、研究者自身がネットワーキングやシステム構築を実践、あるいは取組に参画し、その過程を記録、検討、フィードバックする形で進められ、研究とシステム構築が同時進行する。 平成21年度は、(1)持続可能性(サステナビリティ)を重視した科学コミュニケーションのネットワーク構築とそれによるコミュニティ活性化の支援、および前年度に引き続き、(2)ESDの展開における市民と科学者等の専門家の対話と協働の枠組みづくりとその発展に重点を置いた。重点的フィールドの一つを、兵庫県南あわじ市神代地区におけるコミュニティづくりの活動に設定した。そこでは、科学に関心を持つ市民が、コミュニティの活性化を目的として、シカなどの野生動物による農作物の食害という地域の課題を基底に置き、自然との共生をテーマとした一連のサイエンスカフェを開催、地域住民による取組への展開などを進めた。さらに,これらの成果を受け、地域の自然・伝統・文化と調和したビジョンの構想とその実現に向けた取組みへの展開を見せている。その過程で、大学等の研究者の支援が重要な役割を果たしたほか、大学のBSDプログラムを通じて、学生の関与につながる契機もみられた。特に、神戸大学に設置された「サイエンスショップ」がそのインターフェイスとして機能した。本事例は、地域社会における「持続可能な発展のための教育」展開のモデルとして高い価値を有すると考える。
|