(1)太陽紫外線がイネの生育収量に及ぼす影響解析-コシヒカリ部分置換系統を用いた解析 太陽紫外線がイネの生育・収量に及ぼす影響を評価することを目的に、コシヒカリと、コシヒカリのCPD光回復酵素が座位する第10染色体のみをコシヒカリよりもCPD光回復酵素活性が低下しているインド型イネ・カサラスの第10染色体で置き換えた部分置換系統(SL-229系統)を材料に野外環境試験を行った。なお、カサラスはコシヒカリと比較して、CPD光回復酵素の遺伝子型の違いによってCPD光回復酵素活性が低下しており、SL-229系統はUVB感受を示す。栽培は2007年5〜9月にかけて、宮城県大崎市の実験圃場にて行い、生育調査ならびに収量調査を行った。SL-229系統はコシヒカリと比較して、玄米100粒重の低下、葯の稔性の低下、さらには玄米が小粒化している傾向が認められた。以上の結果から、今日の太陽紫外線もイネの生育に傷害を引き起こしている可能性が示唆された。 (2)非閉鎖系温室での生物多様性影響評価実験 第一種使用規程承認(遺伝子組換え植物の使用に関する大臣承認)を得るために、光回復酵素遺伝子組換えイネ(S-C、AS-D系統)の生物多様性影響評価実験((1)非組換え体と比較しての形態および生育特性(草丈、茎数、葉色、生育速度、生育後の乾燥重の比較)、(2)花粉の稔性、形態観察、(3)花粉の飛散距離測定、(4)非組換えイネとの交雑率、(5)種子の発芽率試験、(6)土壌微生物相に与える影響解析等の解析)を、東北大学大学院農学研究科付属複合生態フィールド教育研究センター(宮城県玉造郡鳴子町)の隔離圃場において行った。結果を「生物影響評価書」としてまとめ、文部科学省へ申請を行った。
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