工場排水等から流出したアンチモンは、毒性が懸念されているアンチモン酸イオンとして水域に存在するため適切な浄化処理を行うことが求められる。本研究では、アニオン交換材料である層状複水酸化物(LDH)のアンチモン酸イオン除去能について検討を行った。 炭酸型、硝酸型マグネシウム-アルミニウム系LDHを、五酸化二アンチモンより調製した40mg/Lアンチモン酸イオン溶液に加えて攪拌し、120分経過まで所定時間毎に溶液を分取しアンチモン酸イオン濃度を定量した。またアンチモン酸イオンを捕捉したLDHを分析した。 <炭酸型>添加10分後以降はアンチモン酸イオンの除去が進行せず除去率は33%であった。アンチモン酸イオン捕捉後の炭酸型LDHのX線回折図よりLDH構造は保持されていたが、アンチモン酸イオン捕捉による層間隔の拡大は見られなかった。一方で捕捉されたアンチモン酸イオンに由来する新たなピークが確認され、マグネシウムイオンとアンチモン酸イオンが2:1の量論比で構成する正電荷層アンチモン酸イオンが単独で構成する負電荷層が積層した化合物Brandholziteと同定した。アンチモン酸イオンは炭酸型LDHの酸中和反応により溶出したマグネシウムイオンと素早く反応し、Brandholziteとして除去されると考えられる。 <硝酸型>添加後10分で除去率58%となった後も時間と共にアンチモン酸イオンが捕捉され、120分で除去率81%となった。炭酸イオンより電荷密度が小さい硝酸イオンを層間に有するLDHを用いることで、酸中和反応に伴うBrandholzite生成後もアニオン交換反応によりアンチモン酸イオンを捕捉したと考えられる。
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