本研究では、N3化合物を分解する酵素を分子レベルで解析し、得られる情報を基に、これらの物質を効率よく無害化あるいは有用物に安全に変換する生物を新規に育種することを目的とした。 自然界からN3化合物分解菌としてスクリーニングを行い、前年度決定したN3化合物分解活性が最大となる最適培養条件で菌体を用いてN3化合物分解の精製を行った。菌体を破砕し、無細胞抽出液を調製した時点でN3化合物分解活性は確認できたが、その活性は低く、さらにN3化合物分解酵素は不安定であることが判明した。大量の無細胞抽出液を調製し、そこからN3化合物分解活性を指標に、精製を開始し無細胞抽出液を硫安で分画後、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィーを組み合わせてN3化合物分解酵素の精製を試みているが、現在、SDS-PAGE上で単一バンドになるレベルまで精製は完了していない。 N3化合物分解酵素の精製が困難であると考えられたため、本酵素の精製と並行しながら、別の方法でのN3化合物分解酵素の取得を試みた。トランスポゾンによる遺伝子導入技術を利用して、本N3化合物分解菌の染色体に直接抗生物質耐性遺伝子をランダムに導入し、多数の抗生物質耐性株の中から、N3化合物分解能を示さなくなった変異株を取得するために、まず、本N3化合物分解菌が保有しない抗生物質耐性遺伝子を調べる必要があり、本年度では、スクリーニングしたN3化合物分解菌の薬剤耐性・感受性を調査した。
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