研究概要 |
自然環境中に存在しているリンを低コストで、再資源化する手段の一つとして、安価な天然由来のタンニン分子をゲル化した三次元網目構造を有するタンニンゲル担体に鉄を導入したタンニン/無機複合体(FeO_xTG)を創製し、鉄の形態評価およびリン吸着能試験を行った。 タンニン/鉄複合体(FeO_xTG)中の鉄の形態評価:鉄が71.5mg-Fe/g-gel導入されたFeO_xTG中の鉄の形態をメスバウアーおよびX線吸収微細構造解析(XAFS)を用いて評価した。その結果、鉄は3価の鉄としてタンニンゲルのB環にあるオルト位フェノール性水酸基の部位にモノ錯体として導入されていることを明らかにした。ついで、XAFSの結果から、鉄の化学形態はα-FeOOH 類似の水酸化物形態で存在することを示した。 リン吸着能試験:FeO_xTG単位表面積当りのリン吸着容量は51.8〜97.2mg/m^2であった。この値は現在、水処理用リン吸着剤(各種鉄酸化物)の容量に比べて600〜1130倍と極めて大きいことが明らかとなった。FeO_xTGのリン酸イオンの吸着は、各種塩(Na_2SO_4, NaNO_3,NaCL)が、解離した共存イオン下においても吸着量が減少しないことから、この現象は、ゲル/液界面において、カチオン交換により溶離した鉄イオンが、ゲルネットワーク近傍でリン酸イオンと結合し、ゲルを構成している分子鎖上に吸着・析出する機構に基づくと推察される。 本研究で開発したFeO_xTGは、水処理用の吸着剤としての利用はもとより、自然環境中のリンの循環過程において、余剰のリンを回収し、リン肥料として再資源化することが可能であることを示した。
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