硝酸イオンを含む水を乳幼児が飲むと硝酸イオンが胃中で亜硝酸イオンに還元され、これがヘモグロビンと結合して酸素運搬能力を失わせるため、場合により死に到る(メトヘモグロビン血症)ことが知られている。そこで、水中に存在する硝酸イオンを水素で窒素にまで還元できる新しい触媒系を見出すことを目的に研究した。種々の複合酸化物のナノ粒子をグリコサーマル法で調製し、この触媒担体に貴金属を含浸法で担持して触媒を調製し、硝酸イオンを含む溶液に触媒を分散させ、水素をバブリングすることにより触媒性能を比較した。検討した触媒の中ではチタニアやシリカ修飾チタニアに担持したPd-Cu触媒が高い硝酸イオン還元活性を持つことを見出した。この反応では、触媒表面への水素の拡散が反応を支配しており、担体の細孔構造や分散性が触媒性能に影響を与えることを見出した。貴金属触媒を担持する段階で、水溶液を乾燥させており、この乾燥段階で水の表面張力により担体のナノ粒子が強く凝集しており、水以外の溶媒を用いることにより担体粒子の凝集を緩くすることにより、触媒活性が向上することが示唆された。また、反応によりアンモニアが副生、試料溶液のpHが上昇し、このため、反応速度の解析が困難になるが、反応では、窒素やアンモニアとともに亜硝酸イオンや一酸化二窒素が副生し、シリカ修飾チタニアに担持したPd-Cu触媒では、硝酸イオンが完全に除去された後、亜硝酸イオンの還元反応が開始するという極めて特異な挙動を取ることを見出した。
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