研究概要 |
MOF構造を用いた薬剤分離 : 鏡像異性体の対掌性ビルディングブロックを用いた有機金属構造体metal-organic framework(MOF)系の詳細な理論解析を行った。生体活性を示す代表的な化合物・薬剤の重要な構成要素である、対掌性を持つ数種類のスルポキシドのテレフタル酸エステル乳酸塩ホモキラリティー高分子の吸着過程を調べた。吸着サイトと電荷密度分布の解析から、ホストーゲスト間の相互作用を評価した。bdc(terephthalate)からbpdc(4, 4'-biphenyldicarboxylate)までリガンド長を変えること、および、dmf(N, N'-dimethylformamide)の有無により、ポアのサイズを調整した。大きなポアを用いるとスルポキシドゲスト分子などの大きな分子を吸着できることを明らかにした。一方、dmf基を取り除いた系では弱い吸着になること、電荷分布解析からdmfとゲスト分子間の相互作用はファンデルワールス力よりも大きいことも判明した。計算したMOF構造は薬剤分離に利用可能であること、さらに、光学異性体の分離、キラル合成、触媒用材料としての可能性が示された。 水素貯蔵材料のゲストーゲスト、ゲストの相互作用の正確な理論的記述 : CS-II構造のハイドレートは水素を4.96%貯蔵することが知られているが、そのためには高圧が必要であり、実用化は現実的ではない。水素ハイドレートの安定化の方策の一つはTHFのような第2のゲスト分子を添加することである。しかし、この方法では吸蔵量が1%にまで落ちる。大きなケージを占有するTHFの代わりに小さいケージを占有し、ハイドレートを安定化させる分子の探索を高精度第一原理計算により行った。
|