透過電子顕微鏡三次元(TEM-3D)トモグラフィはナノレベルでの金属組織形成に関する新たな情報を提供してきており、今後、この手法を一般的なものとして確立し、特にこれまで静的な試料に対して明らかにされてきた三次元情報を動的な観察まで拡張することが必要である。本研究は動的3Dトモグラフィの実現を目差すものであり、そのためにはいくつかのステップを踏む必要があるが、本年度は基本技術の確立に重点を置き、研究を行った。 電顕技術という観点からは一軸ホルダーを用いて+/-70度まで試料を傾斜し、データを自動取得する技術を確立する一方、当初予定していた通常のTEM像だけではなくSTEM像の取り込みも行った。 観察対象という観点からは今年度は時効析出合金に主眼をおき、析出物のミクロンレベルの分散状況を三次元的に調べた。具体的にはCu-Ag系、Mg-Nd系などがあげられる。Cu-Ag系では粒界からの不均一析出の状況を本方法で明らかにすることを試みた。データの取得は問題なくできたが、コントラストが弱く再構築に検討の余地があることが判明した。これは次年度への継続課題として検討する。一方、Mg-Nd系では粒界に単純偏析していると思われたNd元素が、実は一種の構造をもっていることを明らかにした。これはトモグラフィを適用することによってはじめて明らかとなったことである。さらにこの手法を高温耐熱合金であるCo-Ni系に適用し、板状析出物の分布状態を明らかにし、高強度化の原因追求の一助とするとともに材料設計への指針とした。
|