ナノレベルでの金属組織形成や微粒子の分布等を実空間で解明するために透過電子顕微鏡三次元(TEM-3D)トモグラフィーは近年大きく着目されている技術である。本研究は動的3Dトモグラフィの実現を目差すものであるが、そのためにはいくつかのステップを踏む必要があり、今年度は基本技術をいくつかの系に応用することで問題点を抽出するとともに、耐熱合金の整合析出相などに関してその分布を考える際のz方向の精度に関する定量的な評価を行った。また、電顕技術という観点からは一軸ホルダーを用いたTEMやSTEM像の取り込みだけでなく、面内回転機構を有するホルダーを用いて結晶方位に依存した三次元分布状態を明らかにする必要があり、そのための基礎データを蓄積した。 観察対象という観点からは今年度は時効析出合金だけではなく磁性微粒子やカーボン系材料まで拡張した。具体的にはCu-Ag系、Mg-Nd系などの他、Fe-Pd合金微粒子やバイオマスから作成されたナノチューブなどがあげられる。基礎的な側面としてはトモグラフィーの精度という観点からミッシングエッジが再構築像に対して与えるエラーを定量的に評価し、z方向に対する誤差が数10%に及ぶことをホログラフィーなど他の手法の比較により明らかにした。さらに応用という観点からはCo-Ni系で板状析出物の分布状態を明らかにし、組成の分布、特にNbの分配が予想と大きく異なっていうることを明らかにし、耐熱材料としてのCo合金の高強度化の指針を得た。
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