非常に細長い形状を持つカーボンナノチューブ(CNT)には大きな光電場増強効果が期待される。また、一次元性の強いCNTは非常に強い共鳴的光吸収を示すばかりでなく、共鳴付近で複素誘電率(超分子分極率)の異常分散も大きく、表面プラズモン共鳴と本質的には同様の原理で、しかもより巨大な光電場増強効果をもたらす可能性がある。本研究は、CNTによる光電場増強効果の有無を検証することを目的とし、今年度は次のことを行った。 1.2層CNT探針の作成:豊田工大の協力を得て、2層CNTをPt-Ir探針の先端に電子ビームCVDにより生成したアモルファスカーボンを用いて接着し、2層CNT探針を作成。 2.走査トンネル分光(STS)法による2層CNT探針の電子構造評価:探針とグラファイト結晶間でSTS測定を行い、探針先端の2層CNTが第1Hvギャップ幅が約0.7eVの半導体であることを確認。 3.光整流電流の観測:光電場増強効果によって増大が期待される光整流電流を検出するため、この2層CNT探針とグラファイト結晶問に波長800nm(第1Hvギャップ0.7eVに対し第2Hvギャップにほぼ共鳴)のレーザー光を照射し光整流電流の測定を試みた。光熱膨張によらない信号が測定中一時的に観測されることが分かった。 4.共鳴的光誘電泳動による特定CNT分離の試み:ジメチルフォルムアミドに種々の構造の単層CNTが混合分散させ、レーザー光を照射すると、照射ビームに捕捉されるCNTとはじかれるCNTが存在することを見出した。光に対するこの力学的応答が、共鳴的光吸収によるものかどうかを調べるために、凝集したCNTのラマン測定を行った結果、波長選択的な凝集が起こっていることを示唆する結果を得た。
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