原子間力顕微鏡(AFM)を用いる1分子力学計測とナノポアを流れるイオン電流計測による1分子計測を同時に行なうことができれば、1つの現象を2つの別の目で同時に見ることになり、より優れた1分子分析法となると考えられる。そこで研究代表者らは、これらの2つの計測方法を同時に実現する方法として、AFM探針でナノポアを「作成」する方法が有効ではないかと考えている。本研課題ではその実現方法を検討し、AFMを用いる1分子力学計測とナノポアによる1分子計測を同時に行なう手段(「1分子レベル分析クロマトグラフィー」と呼称する)を開発することを目的としている。研究期間の1年次において、カーボンナノチューブ(CNT)をAFM探針の先に取り付ける、いわゆるCNT探針の作製技術に関して大きく進歩し、ルーチン的に作製できるようになっている。またAFMのステージ上に脂質二分子膜を形成させ、その力学測定が可能であることを明らかにした。一方、予期した以上に膜に流動性があることが明らかとなり、安定なナノポアを形成するには至っていない。従って2年次には以下の計画に沿って、安定なナノポア形成法の確立、その構造体を利用する電気化学計測系の構築を目標とする。 1.1年次にほぼ確立したべシクルフュージョンによるナノサイズ二分子膜作製法により製膜し、その場において光重合により固化させることを試みる。 2.CNT探針を用い、ナノポアの形成を試みる。 3.AFMを利用して作製したナノポアを利用する電気化学計測系を構築する。特に経過時間に対するナノポアの安定性に注意し、最終的にはAFMと同時に利用できる系の構築を目指す。
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