研究課題
原子間力顕微鏡を利用した細胞操作法の開発を行うため、本年度は生体膜タンパク質に着目した。赤血球膜に存在するグリコフォリンAとバンド3タンパク質が、それぞれ小麦胚レクチン(WGA)およびコンカナバリンAとに特異的に結合する糖鎖を持つことを利用して、原子間力顕微鏡の探針にこれらのレクチンを固定した後、赤血球表面から膜タンパク質を引き出す実験を行った。この実験において重要な役割を果たす、WGAは2量体タンパク質なのでそのサブユニット間結合力を測定した。その結果、サブユニット間結合力は150pN程度のかなり強いものであることがわかった。そのloading rate依存性の測定も行った。また、これまでの実験で、細胞骨格に結合しているバンド3と結合していないグリコフォリンAではその延伸曲線に違いがあることがわかっていたので、本年度は細胞骨格そのものの延伸力学的性質を解明することを目的とした。赤血球の細胞膜脂質をリン脂質分解酵素あるいは非イオン性界面活性剤により除去した後、細胞骨格だけをとりだし、これをガラス基板に固定し、コンカナバリンAおより抗アクチン抗体を固定した探針を用いて、細胞骨格の特異的部位からの引き出し実験を行った。コンカナバリンAはバンド3を通じてアンキリン結合部位から、また抗アクチン抗体はスペクトリンのネットワーク構造をまとめる部位にあるアクチンに結合して細胞骨格を延伸する。それぞれの部位からの延伸曲線には違いが見られることから、一様なネットワークと考えられていた赤血球の細胞骨格には局所により力学的性質が異なることを発見した。細胞内への遺伝子DNAの注入法の開発に関しては、注入するDNAの定量化を、原子間力顕微鏡探針先端に結合したDNA量の測定をけい光顕微鏡を用いて行っている。論文発表について現在準備中である。
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Phylosophical Transaction of the Royal Society (インターネット版)
Current Nanoscience 3
ページ: 17-29
Biochemistry 46
ページ: 3856-3861