当該研究は、フッ素の親和力を用いたガラス壁面への触媒固定化技術を用い、マイクロ・ナノチャネル内化学反応のリアルタイム解析および触媒スクリーニングを同時に可能とするシステムを構築することを目的としている。本年度は、フルオロカーボンを持つシラン化剤でチャネル壁面を修飾した後、ルイス酸触媒であるスカンジウムトリフラート(フッ素系配位子を持つスカンジウム錯体)を含む溶液をチャネル内に導入することで、チャネル壁面全体に金属触媒を固定化することに成功した。触媒を固定化したガラス壁面からアルカリによって触媒を剥がし、ICP(誘導結合プラズマ分光)分析を行うことで、単位面積あたりの固定化触媒を定量することが出来た。また、VUV(真空紫外光)を流路の一部分に照射して固定化物を分解することで、マイクロ・ナノチャネル壁面の任意の位置に金属触媒をパターニングすることも可能となった。これらにより、触媒を固定化したチャネル内における触媒的有機反応を行うための基盤技術が確立できた。 さらに、既存の半導体加工技術を用いて核磁気共鳴(NMR)に適用可能なマイクロ・ナノチャネルを持つチップを作製した。作製したチップにモデル試薬を導入してNMRスペクトル測定を行ったところ、マイクロ・ナノ空間においても充分な感度でスペクトルが検出されることを確認した。次年度には、触媒を固定化したチャネル内で進行する化学反応のNMRリアルタイムモニタリングへ展開する。
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