当該研究は、フッ素の親和力を用いたガラス壁面への触媒固定化技術を用い、マイクロ・ナノチャネル内化学反応のリアルタイム解析および触媒スクリーニングを同時に可能とするシステムを構築することを目的としている。本年度には、フッ化炭素鎖を持つシラン化剤で修飾したマイクロチャネル内に、ルイス酸触媒であるフッ化炭素鎖を持つスカンジウム錯体を含む溶液を導入して、触媒を固定化した後、100μmチャネル内にてアルドール反応を試みた。また、このチャネル内反応を、バルク均一系および不均一系(触媒固定化した粒径60μmのシリカゲルを混ぜる)と比較した。これら3つの系全てにおいて触媒濃度が同等になるように調整すると共に、収率が20%に達するまでの反応時間から、反応効率を評価した。その結果、バルク均一系における反応時間は20分であったのに対し、不均一系では7分、チャネルでは3分で同収率に到達した。すなわち、チャネル内に触媒を固定化することで、反応速度が向上することが分かった。さらに、チャネルのサイズ依存性についても検討した。この時、チャネル内での溶液滞在時間が5分となるように、流速を調整している。その結果、チャネルサイズの減少に伴って、すなわち比表面積が増大するにつれて反応速度が向上し、100μmチャネルでの収率20%から50μmチャネルでは36%まで増加することが分かった。さらに、繰り返し操作による収率への影響は見られず、再利用も可能であることを確認した。
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