終戦直前・直後に米軍により撮影された航空写真は、戦後の地形改変以前の記録として、地形や活断層研究等において有効性が高いことは周知の事実であるが、本研究では1944年東南海地震直後と1948年福井地震の前後に撮影された航空写真を国内外において収集し、写真測量学的および災害地理学的に解析して、地震災害研究における有効性を検証した。収集した写真の多くは米国公文書館で研究協力者である財団法人日本地図センター地図研究所の研究員が発見したもの、もしくは国土地理院が2008年度に新たに一般提供を開始したものである。 検討作業においては、(1)写真判読的検討(被害状況に関する詳細な判読結果を、地上写真や記録等、現地調査で得られた結果と整合させて検証する)、(2)写真測量学的検討(写真撮影時期により異なる仕様を考慮して、写真解析的手法の適用限界を検証する)、(3)被害解析的検討(被害率や復興状況の定量化についてのフィージビリティを検討する)の3点を検討課題とした。 1944年東南海地震直後の尾鷲市付近の写真においては、空中三角測量により当時の地形10mDEMを取得してオルソ化した.これを航空レーザ測量による2mメッシュDEMや2500分の1都市計画図等とGIS上で重ね合わせた。米軍写真はこのような解析に十分耐える精度があり、地上の被害写真との照合して、(1)津波で大きな被害を受けた地域が現在の海抜3m以下の範囲とほぼ一致していること、(2)引き浪の際に浅い谷地形の場所に被害が集中したことなどが判明した. 1948年福井地震について、従来欠落していた震央(丸岡)付近の写真を公文書館から入手し、地震前後の数百枚に及ぶ福井平野全域の写真データベースを作成した。地震前後の写真の比較から、液状化や地割れ等の地表変状を判別し、微地形との関係の詳細が新たに判明した。また、地震前後の写真を用いた地表変動量の解析を試みた。
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