糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病は、終局的には虚血性心疾患や脳卒中などの動脈硬化疾患や失明、透析などの糖尿病性合併症を生じて、日本人のQOLおよび生命予後を著しく悪化させており、その管理予防が現代社会における危急の課題である。近年、遺伝子発現制御の分子メカニズムにおいて、蛋白質をコードしないRNAである機能RNA(non-coding RNA)の存在が注目されている。機能性RNAに含まれるmiRNAはmRNAに働きかけ、転写・翻訳を阻害することでタンパク合成を抑制する。1つのmiRNAは複数の遺伝子を標的とすることから、1つのmiRNAの発現異常が病態形成に大きく起因することが推測される。したがって、生活習慣病をはじめとする病態へのmiRNAの機能を明らかにすることは生活習慣病発症の新たなメカニズムを明らかにできる。 本研究では、生活習慣病の発症に関わるmiRNAの同定するため、正常マウスと肥満モデルマウスの間で発現が変動するmiRNAを網羅的に解析した。肥満モデルマウスで発現が増加するmiRNAとしてmiR-335を同定した。miR-335は肥満モデルマウスの肝臓および白色脂肪組織で正常マウスに比べ顕著な増加を認めた。この発現変動はリアルタイムPCRでの解析でも確認した。病態モデルマウスでの発現増加からmiR-335が病態形成に深く関わることが推測された。現在、アデノウイルスを用いたmiRNA過剰発現系を確立し、生活習慣病に関わる遺伝子発現に対するmiR-335の機能について解析を行っている。
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