平成19年度目標とした出芽酵母を用いたオーキシン誘導タンパク質分解による変異株の作製法を確立することに成功した。出芽酵母にシロイヌナズナ由来TIR1と、GFPのN末端もしくはC末端にシロイヌナズナ由来IAA17を融合したタンパク質を発現する株を作製した。培地中に植物ホルモンオーキシンとして知られる、インドール酢酸もしくはナフタレン酢酸を添加すると30分以内にGFPタンパク質の発現が消失した。この反応はTIR1非存在下では起こらないこと、またプロテアソーム阻害剤で阻害されることから、細胞内で形成されたSCF^<TIR1>のユビキチン化反応による分解により標的GFPタンパク質が消失するものと考えられる。この結果は、植物特有のオーキシン分解反応を出芽酵母に導入することに成功したことを示している。また分解誘導後、オーキシンを含まない培地に細胞を戻すとGFPタンパク質が再発現することから、この分解反応は可逆的であることが示された。 つぎに、実際の内在性因子にこの分解反応を応用することで、条件特異的変異株が作製できるか実験をおこなった。染色体複製因子Mcm4のN末端もしくはC末端にIAA17を付加した細胞は、正常に生育するがTIR1を発現させた時にオーキシンを添加した培地上ではコロニー形成ができなかった。さらに液体培養をおこない細胞周期を調べたところ、オーキシン添加時によりG1期からS期への移行ができない細胞の集積が観察された。すなわち、オーキシンの添加によって制御可能な条件特異的変異株作成が可能となった。他の細胞周期因子にも応用したところ、キネトコアタンパク質であるAsk1の場合はM期の移行が、サイトキネシス因子のMyo1の場合は細胞質分裂の過程が阻害されたことからも、この方法が多くの因子に応用可能であることが示された。
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