微量に存在する核内受容体蛋白質をターゲットに高親和性抗体-磁気ビーズを用いたプロテオミクスを行うことで、複合体のストイキオメトリーを壊さずに、転写複合体が構造の類似した合成リガンドの濃度・時間によって遷移する様を追跡する系を樹立した。本研究ではバキュロウィルス上に融合蛋白を発現させた蛋白質を免疫する方法によって作成した高親和性抗体(Kd 10-8以下)を低ノイズ磁気ビーズに固定化させ、サンプル調整を行うことにより、現在のプロテオミクス解析を更に効果的なものとした。 3T3-L1脂肪細胞では、スプライソゾームや蛋白のinitiation complexに関わる蛋白など、これまであまり報告のない蛋白が再現良く取れた。さらに、生体内の核内受容体によるシグナルはリガンドの多様性により決定されることから、PPARγの合成された種々近縁の多様なアゴニストリガンドによって変動するデータを比較検討することを行っている。これはアゴニスト作用のある種々類似の薬剤でのプロテオミクスは、大量のデータを意味づけるうえで重要である。しかしながら、PGC1やその他、よく知られたmediator複合体などが逆に検出することが出来なかった。これまでの過剰発現系で見られてきた複合体がネイティブ蛋白レベルで見られない理由については不明である。本研究ではネイティブ蛋白とのストイキオメトリュに重きを置いた研究であるが、アゴニストリガンドによる変動も必ずしも再現が取れるわけではなく更なる最適化が必要である。また、今回新たにPPAγはRXRαのみならずRXRβと複合体を形成することが明らかにされた。さらに、mRNA transportとmRNA locanzationにかかわるミオシン、Translation initiationにかかわるEIF4ファミリーも検出された。ただしこれらは通常細胞質に存在する蛋白であるため、さらに注意深い検討が必要である。CTCFとの複合体コンプレックスも見られ、PPARγの広範囲な機能が推測された。
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