研究概要 |
本研究の開始に先立ち収集したキシメジ属菌(クマシメジ,シモフリシメジ,アイシメジ,カキシメジ)ならびにベニタケ科菌(キチチタケ,アカハツ,ニオイコベニタケ)を用いて,アカマツ実生との間で菌根合成を行った結果,殆どの組み合わせで外生菌根が形成された(2者培養系).このため,予備試験的に,無菌的に摘出したギンリョウソウとシャクジョウソウの種子を上記の2者培養系に導入し,種子の動態を観察した結果,ギンリョウソウはアカハツとニオイコベニタケの接種区で,シャクジョウソウはクマシメジ,アイシメジ,カキシメジ接種区でそれぞれ発芽が観察された.発芽種子は両種とも平均0.4mmほどで,未発芽種子(平均0.2mm)より顕著に大きかった.アイシメジ接種区のクマシメジでは約40%の種子が発芽したものの,その他の組み合わせでは発芽率が2-3%と著しく低かった.これらの事から,ギンリョウソウとシャクジョウソウの種子発芽には菌種が特異的に影響を及ぼす事が明らかになり,種子の人工的な発芽誘導には,共生菌の選抜が重要であると推察された.なお,これらの実験では,長期的に培養系の無菌状態を保つこととマツ実生の十分な成育を維持することが難しいため,外生菌根苗を作成しオープンポットで維持する実験系を構築することに着手した. 樹木実生の違いがシャクジョウソウ亜科植物の発芽に与える影響を調査するため,野外で自然発芽したアカマツとコナラの実生をワグネルポットに植栽し,ポット土壌にギンリョウソウとシャクジョウソウの種子を埋土した結果,ギンリョウソウでは両樹木種のもとで発芽が見られ,3者共生系の宿主として利用できることが明らかになった.
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