研究概要 |
平成19年度にin vitroの外生菌根共生系(2者培養系)に種子を導入することによりギンリョウソウとシャクジョウソウの種子発芽が誘導された事から,より自然条件に近い系での発芽誘導の検証を行うため,20℃に設定した植物用グロースキャビネット内でオープンポットに移植した外生菌根苗の根系に種子(果実)を導入する実験を行った.その結果,ギンリョウソウでは,自然界で共生し得るキチチタケやニオイコベニタケの系とともに,対照区のオオキツネタケとショウロの系でも発芽が誘導された.果実あたりの種子発芽率はおおよそ10%程度であったが,一部の果実では50%の発芽率を記録する場合もあった.一方,シャクジョウソウでは,アイシメジ,カキシメジ,クマシメジの系でのみ発芽が誘導され,対照区(オオキツネタケとショウロ)では発芽が誘導されなかった.また,屋外に設置したオープンポットに移植した外生菌根苗(キチチタケ定着)の根系にギンリョウソウ種子(果実)を導入した結果,室内実験と同様に種子発芽が誘導された.発芽した植物体の大きさは,いずれの実験系でも長さ50-200μmで,昨年度の閉鎖系ポットで得られた植物体の大きさと同程度であった.シャクジョウソウでは,明瞭な菌鞘構造が観察される場合が多かった. 以上の事から,ギンリョウソウでは成体の菌根共生とは異なり多様な外生菌根により非特異的に発芽が誘導される一方,シャクジョウソウでは成体の菌根共生と同様に特異的は異な外生菌根により発芽が誘導されると考えられた.また,この発芽誘導技術が,実験室内ならびに屋外の両環境下で応用できると考えられた.
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