本研究の目的は、飛翔性の海鳥類であるオオミズナギドリを対象として、年間を通じた鳥の移動を追跡する技術を確立し、本種がどのような海域を利用しているか、またその海域がどのような特徴を持つか明らかにすることである。本研究の初年度である今年度は、過去に得られている予備的データの解析と新たなデータを取得するための野外調査を行った。予備的データの解析では、鳥に装着した光のレベルを記録する記録計(ジオロケータ)のデータから鳥の移動経路(緯度・経度)を推定する手法について検討した。そしてこの手法を用い、伊豆諸島御蔵島で繁殖していたオオミズナギドリ2個体の越冬海域や越冬のための渡りのタイミングについて解析した。その結果、御蔵島のオオミズナギドリが繁殖終了後、11月-12月に南へ向けて渡りを行い、3400km-5200km離れたオーストラリア北部のカーペンタリア湾やニューギニアの北の海域に3月上旬まで滞在して越冬していることが初めて明らかになった(高橋ら、印刷中)。一方、新たなデータを取得するための野外調査を、7月-10月に掛けて岩手県三貫島と新潟県粟島のオオミズナギドリ繁殖地で行った。光のレベルを一年にわたって記録する小型ジオロケータ(5g)を強化プラスチック製の足環に固定してオオミズナギドリの足に装着した。これらの記録計については、鳥が繁殖後の渡り・越冬を終えて次に繁殖地に戻ってくる時(来年度7月以降)に回収し、越冬海域についてのデータを取得する予定である。
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