本研究の目的は、飛翔性の海鳥類であるオオミズナギドリを対象として、年間を通じた鳥の移動を追跡する技術を確立し、本種がどのような海域を利用しているか、またその海域がどのような特徴を持つか明らかにすることである。本研究の2年目である今年度は、7-10月にかけて、岩手県三貫島・新潟県粟島にあるオオミズナギドリの繁殖地で野外調査をおこない、1)昨年度、鳥に装着した光のレベル・着水を記録する記録計(ジオロケータ)の回収、2)新たなデータを取得するためのジオロケータの装着を実施した。回収したデータについて、光のレベルから鳥が滞在していた緯度・経度を解析し、また着水データから越冬海域での鳥の水面滞在時間を解析した。その結果、三貫島・粟島のオオミズナギドリが繁殖終了後、11月-12月に南への渡りを行い、ニューギニア北部海域、アラフラ海、南シナ海の3つの海域を越冬地として利用していることが明らかになった。オオミズナギドリは、3-4月にこれらの越冬地から日本沿岸の繁殖地近くへと移動しており、この北上のタイミングは5月頃に日本沿岸海域で発生する高い一次生産性(スプリングブルーム)と関係することが示唆された(論文準備中)。また、越冬海域でのオオミズナギドリの一日あたりの水面滞在時間が月の周期と関係しており、新月から満月に近づくにつれ水面滞在時間が短くなっていくというサイクルを持つことが明らかとなった。月の周期が越冬海域の餌生物の利用可能性に影響し、満月のときにはオオミズナギドリが活発に採餌をおこなっていることが示唆された(Yamamoto et al.2008)
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