亜熱帯性高地地域(セントラル州ニェリ県)において、主として土砂移動の発現する雨季における降雨強度とこれに対応する土壌水分量変化とに関する観測データを引き続き取得し、また具体的な地形変化速度を明らかにするための経年地形測量を行った。併せて年間降水量の大きいアバデア山地東部地域の観測データの充実を図るべく、本地域に土壌水分量観測地点を新たに設置した。また、同地域における斜面物質移動プロセス解明に関する現地調査・年代測定試料分析を継続させ、当地域では表層崩壊等による斜面更新においてほぼ10^2年程度、大規模ガリー形成において10^1〜10^2年程度の時間スケールでの斜面物質移動が生じている可能性が明らかにされた。前年度より着手した、本地域の地形変化プロセスおよび土地環境条件に対する現地農民の認識に関する調査においては、地形現象や土壌に関わるキクユ語の把握整理を行い、とくに地形条件・土壌タイプと農耕好適度に関わる現状認識を数戸農家でのインタビュー等より明らかにした。 半乾燥地域(リフトバレー州ライキピア県)においては、シートウォッシュ堆積物に関する表層地質調査・年代測定試料分析を継続させ、当地域では約2.7〜1.9kaにかけての時期にシートウォッシュ強度が増し、その後の静穏期を挟み約0.6kaから現在にかけてシートウォッシュ強度が再び増し、根萌芽による更新によるEuclea属等の根系に保護された小丘斜面が形成されたことが明らかにされた。すなわち、当地域の斜面更新の時間スケールは10^2〜10^3年程度と考えられ、隣接する亜熱帯性高地地域に比べ、時間オーダーや斜面プロセスそのものに差異がある。このことが両地域の斜面後退速度の違いに大きく寄与していると考えられる。
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