本研究は、中世神道の中世の諸学芸に与えた影響について、従来、中世文化のなかで周縁的存在としてあまり注目されることがなかった、通俗的で雑々たる内容を持つ資料(周縁的資料)に関する文献調査を行なおうとするものであった。研究目的を達するために、初年度の最初には、各地の寺院・文庫・図書館の蔵書目録、研究文献、インターネット等を利用して、調査予定書目のリストを作成、それに基づいて資料採訪を行い、その複写・撮影を進めた。データ構築のため『真言宗智山派所属寺院聖教史料撮影目録』『正智院聖教目録』等を経費にて購入、活用した。 対象は、軍書(兵法書・弓術書・馬術書)を中心としつつ、諸学・諸道関係資料(漢学・卜占・兵法・医学等)にも及ぼす。調査を実施し得た調査地は、内閣文庫(東京都)・国文学研究資料館(東京都)・県立金沢文庫(神奈川県)・勧修寺(京都市)・妙法院(京都市)であった。 また、一寺院の主たる聖教全てを撮影データ化した『増福院文庫善本集成 DVD-ROM版』を経費にて購入し、その内容の検討を綿密に行った。 以上の調査によって得られた資料の一部を使用し、発表「胎内五位・十月図説の中世的展開」(2007年11月3日、ハーバード大学〔米国〕)を行い、また論文「神仏習合理論の変容-中世から近世へ」(『宗教研究』353、2007年)、「本地垂迹思想の展開」(『国文学解釈と鑑賞』72-10、2007年)を執筆した。
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