本研究は、中世神道の中世諸学芸に与えた影響について、従来、中世文化のなかで周縁的存在としてあまり注目されることがなかった、通俗的で雑々たる内容を持つ資料(周縁的資料)に関する文献調査を行なおうとするものであった。研究目的を達するために、前年度に引き続き、各地の寺院・文庫・図書館の蔵書目録、研究文献等を利用して、調査予定書目のリストを作成、それに基づいて資料採訪を行い、その複写・撮影を進めた。 対象は、軍書(兵法書・弓術書・馬術書)を中心としつつ、諸学・諸道関係資料(漢学・卜占・兵法・医学等)にも及ぼした。調査を実施し得た調査地は、善通寺(香川県東京都)・兵庫県立歴史博物館(兵庫県)・県立金沢文庫(神奈川県)・勧修寺(京都市)・妙法院(京都市)であった。 また研究費を使って『田夫愛染法』『神代秘決』等一次資料を購入し、内容の分析・調査を行っている。 研究の成果公表については、調査研究によって得られた資料及び知見を利用して、「食とタブー-特に肉食禁忌をめぐって」(国文学解釈と鑑賞別冊「文学に描かれた日本の「食」のすがた」2008年)、「愛染明王と天照大神信仰」(平成20年度 茨城大学人文学部共同研究ユニット報告書「文学史・文化史・思想史における愛」2009年)を執筆した。また、本年度早稲田大学に提出した学位請求論文『天照大神信仰の中世の展開』においても、本調査を踏まえた論述を行っている。
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