本研究は、中世神道の中世の諸学芸に与えた影響について、従来、中世文化のなかで周縁的存在としてあまり注目されることがなかった、通俗的で雑々たる内容を持つ資料(周縁的資料)に関する文献調査を行なおうとするものであった。今年度も引き続き、各地の寺院・文庫への調査を行なった。 対象は、軍書(兵法書・弓術書・馬術書)を中心としつつ、諸学・諸道関係資料(漢学・卜占・兵法・医学等)にも及ぼす。今年度は特に、立川流関係の資料の収集に努めた。調査を実施し得た調査地は、富士市立博物館(静岡県)・和歌山県立博物館(和歌山県)・国文学研究資料館(東京都)・県立金沢文庫(神奈川県)・勧修寺(京都市)・妙法院(京都市)であった。 特に、富士市立博物館に所蔵される旧修験道寺院東泉院(六所家)資料の調査する機会にめぐまれ、そこで『御口決集』という立川流の伝書を見いだし、その報告を富士市立博物館発行の『六所家調査だより』に掲載した。同資料には、ほかにも御流神道関係の印信類もあり、同時に調査・撮影を行なった。 また、資料調査によって得た成果に基づいて、2010年3月に北京外国語大学北京日本学研究センターにおける国際シンポジウム(東アジアの『今昔物語集』と<予言文学>)において、「臨終と魔」と題する研究発表を行なった。 さらに、これも収集資料を使用して執筆した「中世の行基信仰と伊勢神宮」は、Tastuma Padoan氏と彌永信美氏によって英訳され、「The Medieval Cult of Gyoki and Ise Shrines : Concerning the narratives of Gyoki"s Pilgrimage to Ise」として『Cahiers d'Extreme Asie』誌に発表された。
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