1. 日本でのイタリア美術史・思想史・文学史関連資の原典料の調査と研究 ・マニエリスムの造形理論の形成と展開を、同時代の原典資料の中に跡付け、その整理を行った。継続しているジュリオ・カミッロの文献の研究に加えて、彼の同時代における仮想敵国であったエラスムスの『キケロ派』というテクストに着目し、そこに示された造形美術論を、マニエリスムの重要な証言として提示する新しい発想を得た。平成21年度中に、美術史か美学、いずれかの研究学会で成果を発表し、研究者たちからの意見を仰ぐ予定である。 ・ジュリオ・カミッロ『劇場のイデア』(1550)の翻訳と詳細な注釈、および図解をあつらえた版本の原稿を完成した。これは今年度内に出版予定である。また、1544年に出版されたアルベルティ『絵画論』の版本に付された序文に、マニエリスムの重要な手がかりを見出し、それとサルヴィアーティの絵画様式を比較検討する論文を発表した。 ・フォンテーヌブロー城の「フランソワー世のギャラリー」関係の資料を収集・読解することも開始した。これは、(フィレンツェ、パラッツォ・ヴェッキオのフランチェスコー世のストゥディオーロと並んで)マニエリスム様式とその理論的背景をむすびつける重要な事例であり、その核心および意義を捉えることが、本研究の重要な課題としてあらたに浮かび上がってきた。21年度の研究では、フォンテーヌブローの問題を視野に入れて進めていきたい。 2. ローマにおける原典資料の調査と研究 ・ローマ国立中央図書館で、日本国内では確認できなかった事項を確認した(9月)。
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