ジュリオ・カミッロを中心とする一六世紀前半の修辞学・詩学・同時代文学におけるマニエリスム的造形原理について、イタリア語とラテン語原文の翻訳と註釈を手法として研究した。とくに、ジュリオ・カミッロの『劇場のイデア』の詳細な翻訳研究書を完成して出版することができた。さらに、アルベルティ『絵画論』の一六世紀における受容様態についても新知見を得ることができた。 挑戦的萌芽研究の成果をもとにして、ジュリオ・カミッロに焦点を合わせた研究課題「マニエリスムの時代の眼-ジュリオ・カミッロの美術論の再構成に基づく」が生まれた。これは平成22年度から26年度科学研究費基盤研究(C)(代表者は足達)として採択された。この研究では挑戦的萌芽研究で得た知見をさらに具体化し、総合的な成果を生みだすことを目的としている。 挑戦的萌芽研究ではさらに、エラスムスとカミッロの模倣をめぐる論争が同時代の美術に与えた影響という新課題も得ることができた。 本研究の成果は以下で発表された。 (1)ジュリオ・カミッロ『劇場のイデア』足達薫訳、ありな書房、2009年pp.1-358。 (2)「マニエリストはアルベルティをどう読んだかドメニキ版『絵画論』とサルヴィアーティの関係についての研究」足達薫、弘前大学人文学部編『人文社会論叢(人文科学篇)』、第21号、pp.1-24、2009年。 (3)石鍋真澄監修、石鍋真澄・元木幸一・森雅彦執筆『ルネサンス美術館』小学館、2008年10月28日。執筆箇所、pp.300-301(ジョルジョーネ《嵐》解読)、332-333(ジュリオ・カミッロ)
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