平成21年度は本研究の最終年度にあたり、ハンブルクの5つの主要教会にある合唱団を対象に、アンケート調査を実施した。全部で110名の合唱団員から有効回答を得た。アンケートでは、年齢や職業などの基本的事項の他に、音楽活動の意義、目的、音楽歴、専門教育の経験、さらにカントルに対する職業イメージや社会的期待などを質問した。その結果、現代のハンブルクにおけるカントル職に関するさまざまな課題や問題が明らかにされた。 第1に、ほとんどの団員がカントルはすばらしい職業であり、音楽的才能の他に、リーダーシップ、統率力、コミュニケーション力などの社会性を重要視していた。 第2に、こうした重要な職業であるとの認識から、カントルの職業的な待遇や身分の不安定さに対して、行政や宗教局に対する無理解を指摘する声が多かった。 第3に、ハンブルク市においてクラシック音楽のみならず、宗教音楽に対する市民のニーズが低下しており、市民全体の理解を得るのが難しいという状況がある。 第4に、教会で活動する人々が減少し、ハンブルクを管轄する教区の統合が予定されており、ハンブルクが宗教上の支配的地位も揺さぶられているという現状がある。 こうしたきわめて厳しい状況にありながら、カントルをはじめ、音楽大学生、アマチュアの音楽愛好家がハンブルクの音楽文化をさせているという構図には変わりはなく、今後の文化政策の展開に期待したい。
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