第二次世界大戦で壊滅的打撃を受けた後、似たような復興の過程を辿ってきた日本とドイツにおける平均的国民感情を探るため、両国でポップス(音楽)に関するアンケート調査を行った。当初、日本は東京と宇都宮、ドイツではベルリンとデュッセルドルフという、それぞれ大都市と中都市を選びそこで実施する予定であった。しかし、アンケートを作成する過程で、都市の規模によってそれほど回答内容に影響が出るとは思えないと判断し、日本ではもっぱら宇都宮市で、ドイツはニュルンベルク、デュッセルドルフにおいて実施した。また、調査対象について男女、年齢層とも均等に回収することを理想としていたが、これもそう簡単には行かず、特に年齢層の方は偏りが出てしまったことは反省点のひとつである。 しかしながら、本研究では性別や世代等をもれなく均等に回収し、平均的データを導き出すことが主眼ではなく、むしろ回答された曲を個別に当たり、特にその歌詞をその当時の時代背景なども加味して分析することに重きを置いているので、回収データの偏りは重大な問題点ではないと判断している。それ以上に注目に値するのは、日本でもドイツでも世代ごとに支持される曲があると同時に、世代を越えて、いわば「歌い継がれていく」曲があるということである。 初年度である平成19年度ではまだ分析には至らないが、次年度の課題としては、世代によって支持される歌の内容を吟味しながら、それがヒットしたその当時の時代背景と比較すること、さらに両国の間に何らかの共通点が見出されるのか、あるいはどのような相違点があるのか、そして世代を越えて支持される歌をいくつか選び出し、その歌詞内容の分析からいかなる国民性の特徴が浮かび上がるのかを探ることである。
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