本年度は、主にポストモダン時代のエイリアンとして現れつつある、霊性文化(スピリチュアリズム)と心霊的な存在についての考察を行った。現代においては、「エイリアン」が超越的なものとして現れるのではなく、身近なものとして現れる。結果として、宇宙人・異星人という形象の代わりに、心霊的な存在に目が向けられる。しかし、それはかつてイメージされたような異質で不気味な他者として注目されるのではない。 今日、霊性文化において人々が心霊的な空間に見ているものは、かつてのような意思疎通不可能(あるいは困難)な他者としての死者ではなく、「自己のデータベース」と呼べるものである。それが典型的に現れているのは、例えば新しいタイプの「心霊写真」や、個人主義的なスピリチュアルのブームや、いかがわしい断定的占いの流行である。データベース化した心霊は、絶対的他者の存在を失ったポストモダンの時代における、主体の立ち位置を確認するための便宜的手段として機能する。結果として、現代の心霊的語りは、主体の自己言及的で閉鎖的な欲望の回路を形成している。つまり、現在の「エイリアン」は「外」にいるというより、自己の不可視なデータベース空間にあり、人間的・生物的な形態ではなく、本当の自己に関する情報という形で存在している。 こうした心霊空間のデータベース化には、二つの側面がある。それは自閉的孤立へ向かう可能性を持つ一方で、データベースの共有により、エコロジカルな運動などの新たな連帯を生む可能性もはらんでいる。
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