研究概要 |
平成19年度の研究実績として特筆すべきは次の2点である。 まず,「世界のウチナーンチュ大会」で大会スローガンとして用いられた<チムグクル>や<チムチュラサ>を中心とする沖縄語の意味・用法が海外から訪れた継承言語話者によって再構築される様子を大会後の個別インタビューや大会関連資料を用いて明らかにした点である。再構築された沖縄語は古里沖縄の伝統的意味・用法を体現しつつ,他方で沖縄ディアスポラの経験を内包することで世界規模の沖縄人ネットーワークを形成する言語リソースとして機能している点を論証した。この研究成果は2007年11月に開催された第17回ニュージーランド・アジア研究国際学会で口頭発表し,その結果を踏まえて改訂した後,2008年3月には,同学会が編集・出版する予定のAsian Diasporasに海外研究協力者との共著で提出した。 日本語,英語,スペイン語,ポルトガル語を公式言語とする多言語で運営された「世界のウチナーンチュ大会」における言語計画の実態を言語管理理論の視点から分析したのがもうひとつの成果として上げられる。大会に前後して作成された看板,広報用パンフレット,ウェブページ,新聞記事などを資料に,それぞれの言語が相対的にどのように配置され,序列化されているのかを調査した。また,大会前に行われる翻訳,大会中の通訳,司会,そして外国語ボランティアの活動を精査し,開催地言語である沖縄語および日本語を凌ぐ英語の優位性を批判的に実証した。この研究成果は2007年6月に実施された太平洋学術会議で口頭発表し,2008年4月に学術雑誌(Current Issues in Language Planning)に海外研究協力者との共著で提出した。年度内に出版される予定である。
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