「研究の目的」は、「地方自治体の合併によって、地域住民の日常生活や言語生活に生起する変化がどのように伝播してゆくのかを解明する」ために「今後の発展的研究を視野に入れ、今後の・展開のための基礎研究とする」ことを目標に、方言臨地面接調査を実施することであった。 「実施計画」のうち、兵庫県姫路市夢前町におけるアクセント調査は実施に至らなかったものの、兵庫県姫路市から鳥取県鳥取市に至る30地点180人(各地点男女、高年層・中年層・低年層)のデータに基づき、『JR山陽本線・智頭急行線・JR因美線姫路-鳥取間グロットグラム集』を刊行した。その結果、鳥取市から姫路市に至る地域での方言の地域差が旧国(因幡・美作・播磨)によって高年層には色濃く残っているものの、年層が下がるにしたがって、全国共通語化、地方共通語化、新方言など、さまざまな方言動態を確認することができた。また、当該地域では市町村合併が進んでおり、今後、本研究の課題名にあるような合併による方言変化の動向が大いに注目される地域であり、現時点における方言動態を捉え得たものと考える。 一方、兵庫県南部に位置する加古郡稲美町は、周辺各市との合併は進んでいないものの、住民の日常生活では周辺各市との関係が極めて強くなっている。2004年に臨地面接調査で得られた高年層男女の方言資料をもとに『兵庫県加古郡稲美町言語地図』を作成し、大正末期から昭和初頭生まれを中心とするの年層の方言資料を言語地図化することにより、今後の方言動態を知るうえでの資料とする。
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