本研究プロジェクトの目的は以下の2点である。(1)社会科学分野で外国人留学生に求められるアカデミックジャパニーズ(学術日本語)の内実を明らかにすること(テキストべースの書き書葉と、講義の日本語の話し言葉の両方とも)、(2)その成果をもとに、社会科学分野の学習と研究を日本語で遂行できるかの日本語力を測定する試験の開発を行うことである。平成20年度は、19年度に引き続いて、測定試験の目的、目標基準、試験の内容、試験の方法、構成概念等の基本的なことがらについて再確認しつつ、具体的な試験問題の試案作成にもとりかかった。また、それら作業と平行して、社会科学分野の学術日本語能力測定試験を開発するための「基準作り」およびシラバス作成を、学術日本語を構成する「書き言葉」と「話し言葉]の両面から行ったが、得には話し言葉に重点をおいて行った。社会学、商学を専門とする2名の大学教員の協力を得てその講義を24回分(1回90分)録画録音し、その講義の音声を書き起こしてスクリプトを作成し、社会科学分野の「講義の日本語」の特徴の分析を行った。さらに、そのデータと新たに得られた知見のなかから、学術日本語を構成する基礎的な部分を専門家が認定し、試験問題の試案作成に反映した。それら研究成果の一部を上海財経大学で開催された国際シンポジウムで研究発表した。これまで研究が比較的手薄であった「講義の日本語」の特徴を明らかにする研究分野において意義のある研究作業となっている。
|