日本語学習者の読解過程における未知語(特に漢字語)の意味推測に関する文献を収集し、研究の動向をまとめた。 また、非漢字圏日本語学習者計6名(中級以上)を被調査者として意味推測のストラテジー調査を行った。 調査材料150〜200字程度の日本語の文章。 調査方法個別調査。約4ケ月に渡り約2週間ごとに実施。概要は次の通り。(1)内容理解のための黙読。(2)漢字語の読み確認(音読)。(3)1文ずつ意味を説明させる(日本語か英語)。調査者は適宜、漢字語の意味を確認し、なぜそう考えたか説明させる。(4)文章中の未知語を報告させる。(5)調査者が単語・文章について解説。 【結果の考察】 漢字の読みの誤り漢字を読み誤ったものの中で、その要因が推測できるものに次の3タイプが挙げられた。(1)音訓の間違い、(2)関連語彙による影響、(3)字形の誤認識 (3)のタイプの読み誤りは、意味推測の失敗にもつたながるものであった。(2)(3)は、特に日本語力が低い学習者によく見られた。 漢字語の意味推測の失敗失敗の要因として考えられるのは(1)字形の誤認識(2)漢字を1字1字分析しその組み合わせからの推測が不可能(3)漢字を1字1字分析しその組み合わせから誤推測(4)1つの漢字からの誤推測(5)音からの誤推測(6)漢字語の切れ目の間違い (2)〜(4)は漢字に依存しすぎた意味推測が誤った意味推測につながったものと言える。日本語力の低い学習者は、身近な漢字語彙とすぐに結びつけるため、誤った意味推測に陥る場合があることが示唆された。さらに、(2)〜(4)によって導き出された漢字語の意味を文脈情報と無理に結びつけることで、誤った推測が強化されていることが示された。文脈情報の活用によって語に依存した意味推測を検討・修正するのではなく、逆に文章が曲げられてしまうことが、特に日本語力の低い学習者で観察された。その1つの要因として、構文の分析的な読みが行われていないことがうかがわれた。
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