平成19年度に行った予備調査の結果をふまえ、引き続き非漢字圏日本語学習者計4名(中級以上)を被調査者として意味推測のストラテジー調査を行った。 調査材料 150〜200字程度の日本語の文章と漢字語の意味推測課題シート。 調査方法 個別調査。約4ヶ月に渡り約2週間ごとに実施。概要は次の通り。(1)漢字語の既知未知の判断と意味推測課題シート完成。(2)文章の内容理解のための黙読。(3)漢字語の読み確認(音読)。(4)1文ずつ意味を説明(日本語か英語)。調査者は適宜、漢字語の意味を確認し、なぜそう考えたか説明させる。(5)(1)の漢字語について文章読解後の意味の変化を報告。(6)文章中の未知語を報告。(7)調査者が単語・文章について解説。 【結果と考察】 語構成と意味推測 意味推測の成功には、漢字語の語構成が明確なことが影響していることが示唆された。また、意味推測の失敗の事例から、誤った推測であっても何らかの推測が可能となるには語構成が明確であることが必要なことが示された。この語構成の透明度は単語によって大きく異なっており、同じ語構成を持つ単語であっても、透明度が低くなれば漢字自体の難易度にかかわらず意味推測が困難になることが示された(例:君臨)。 動詞の多義性と意味推測 同一の漢字が複数の意味・用法を有する場合、意味推測にどれが使われるかによって、推測の成功不成功が大きく影響される。特に、「接辞」の用法は、上級学習者であっても推測困難であることが示された(例:殺到)。 漢字の使用頻度と意味推測 個々の漢字が漢字語(2字熟語)を構成する場合、左(前)に使われる頻度と右(後ろ)に使われる頻度は漢字ごとに異なる。漢字語の意味推測に、当該漢字を構成する漢字の左右の位置の頻度が関わる可能性、すなわち、使用頻度の高い位置に使われているほうが、意味推測が成功する可能性が示唆された。
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