研究概要 |
近赤外分光法(Near-infrared spectroscopy:NIRS)とは、大脳を透過した近赤外光の光量変化から神経活動に依存して変化するヘモグロビン(Hb)濃度変化を計測する方法である。今年度は、日本語の内容理解と音韻識別を中心に、NIRS装置を用いて日本語学習者が日本語音声を処理している際の脳活動変化について検討した。 日本語の内容理解は、日本語能力試験の聴解問題に答える「言語理解の課題(課題1)」と、純音に反応する「言語成分を除いた課題(課題2)」から構成した。その結果,課題1では左右前頭葉のBroca野周辺(右半球は同等部位)と推定される部位から側頭葉にかけての広い範囲で有意な賦活が認められたのに対し、課題2では全般的に賦活が認められなかった。以上から、課題1で得られた結果は学習者による日本語理解に依拠するものであると考えられた。また、課題1の賦活の様相について右半球と左半球で検討すると、左半球ブローカ野周辺から前頭葉にかけて、有意な賦活が認められたチャネルは7箇所であったのに対し、右半球では4箇所であった。さらに側頭葉も含めた全体を見ると、有意な賦活が見られたチャネルは左半球14箇所に対し右半球10箇所と、右半球よりも左半球においてより広い範囲での脳活動が認められた。 音韻識別課題の測定では、内容理解の課題で見られたような結果はまだ得られていない。今後測定を継続していま予定である。
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