本研究の目的は、日本人英語学習者(大学生)を対象に、リスニングに随伴して行なうシャドーイングを対象として、擬似発話データの特徴、脳内皮質への影響を調べるものである。言語処理の発話に関係している脳内の領域として運動前野(BA6)が挙げられる。近年の研究から、アルファベット系母語話者ではリスニング最中に、運動前野は音韻処理に関していることが報告されている。本年度は、シャドーイングに見られる擬似発話データにおける心理実験結果を基に、声に出さないリハーサルとシャドーイング(声に出すリハーサル)との比較実験を行をった。 現在まで実施した研究の成果の具体的内容は、以下の通りである。 1.シャドーイングに加えて、統制課題としてノイズ課題による実験を行った。結果は、運動前野(BA6;大脳皮質内での発話に関わる部位)において、シャドーイング(声に出すハーサル)と無声リハーサル(声に出さないリハーサル)との間には有意差が見られなかった。 2.日本人英語学習者による発声開始までの潜在時間は、母語話者による発声開始時間よりも遅いことが確認された。実験の結果から、日本人EFL学習者におけるシャドーイングにおける発声開始までの潜在時間は1500ミリ秒以内に収まることが特定できた。 第二言語学習者に対して、有声リハーサルと無声リハーサルの違いを対象に行った機能磁気共鳴画像(fMRI)実験による研究である。日本人英語者において、無声リハーサル(声に出さないリハーサル)は、シャドーイング(声に出すリハーサル)と同じように大脳皮質内が活性化していることが明らかになった。この結果から、無声リハーサルは、発話という側面においてシャドーイング(声に出すリハーサル)の代替として言語処理を行っている可能性が示された。
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