同年4月「学術創成総合社会科学としての社会・経済における障害の研究」のディスカッションペーパーとして「対日占領期(1945-1952)における傷痍軍人」を発表した。これは前年度の口頭発表を文章にまとめたものである。この中で、占領期の傷痍軍人の運動が患者自治会と深いつながりがあり、国民も傷痍軍人問題が戦後処理問題の重要課題の一つであるという認識を持っていたことが明らかにされた。 同年5月、日本史研究会"Revisiting Postwar Japan as History"(上智大学)にて"Japanese Pacific War Disabled War Veterans from 1945 to 1958"と題する口頭発表を行った。上記の占領期の傷痍軍人運動を踏まえて、戦後間もない頃の傷痍軍人の活動、特に日本傷痍軍人会の結成から運動について考察した。傷痍軍人たちが自分たちの名誉の回復と地位の保全を目指した対外的な活動に焦点を当て、国内だけでなく海外にも彼らの立場を守ろうとする姿が明らかになったことは意義深いと考える。同年6月、障害の障害研究会にて「アメリカ合衆国の障害者史」の口頭発表を行った。この中で、アメリカの障害者の現在の研究状況について語る一方、傷痍軍人の歴史的意義を説明した。この二年間の研究から、アメリカの傷痍軍人についての研究が進みつつあり、この領域が障害者史の中でも重要なものとして認識されていることを報告した。
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