本年度は、これまでに収集した史料の分析、ヤンゴンおよびロンドンでの現地調査、研究集会での報告、論考の発表をおこなった。 まず、これまでに収集した史料の分析、および現地調査(2008年8月、ミャンマ一国立公文書館。同9月、ブリティッシュ・ライブラリー)により、デルタ地域の県庁において作成された文書を閲覧し、19世紀後半のビルマ人行政官の動向、および地域社会におけるその役割などについて、部分的ながら考察することができた。 つぎに国際ビルマ研究集会において、"Re-eXamination of the Relation BetWeen "TheUpper Burma Village Regulation(1887)"and the Local Society"と題する報告をおこなった。これは、19世紀末に内陸部で施行された、村落統治制度(この制度は後年デルタ地域にも導入されたので、本研究課題とも関連性を有する)の歴史的意義を再検討し、植民地権力による一方的な地方社会再編成、という従来の見方では必ずしも十分でないことを示した。 おしまいに「植民地文書からみた19世紀末のビルマ人地方有力者像」を『人文計究』(千葉大学)に発表した。これは、内陸部のビルマ人有力者をとりあげ、そのプロフィールが、英植民地文書のなかでどのように描かれたかを整理し、植民地化の時期を生きたビルマ人像を考察するための手がかりを得ることをめざした。本研究課題やおいても、デルタ地域のビルマ人のあり方に着目しており、同時期のビルマ人と植民地権力との関係にアプローチした本論考は、ひとつの参照例としての意義を持つと思われる。
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