縄文時代に日本列島で生活していた人々の生活様相を探るために本研究では、骨に残された病的所見を手がかりとしている。 20年度においては、茨城県から出土している大谷貝塚出土人骨(縄文時代前期)における古病理学的所見の観察を実施し、前期貝塚から出土する人骨資料に見られる古病理学的所見の様相についての研究を実施した。また、縄文時代人骨における古病理学的所見の特性を把握するために、比較資料として、英国ローマンブリテン期に相当するパウンドリー出土例及び、弥生時代前期に相当する島根県古浦遺跡出土例からデータを収集した。 その結果、時期や地域が異なるとストレス・マーカーの一つであるクリブラ・オルビタリアや虫歯の所見が変化し、生業形態の変化等を古病理学的所見から見て取ることが可能となった。 また、古浦遺跡においては、埋葬地点が性別・年齢によって異なっており、その詳細を加齢性変化のひとつとも捉えられている変形性脊椎症の所見の有無から見て取ることも可能となった。 こういった所見を基に、今後、さらに観察資料を増やしつつ、背景にある生業や周辺環境の変化との相関などをみていく予定である。
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