研究概要 |
平成19年度は研究実施計画に従って、人類学的平和研究の理論的基礎付けに関する研究、およびドイツにおける下からの平和構築に関する予備調査を行なった。 平成19年3月公表の人類学的平和研究の理論的基礎付けを目的とした論文(Oda,H.,2007, Peacebuilding from Below: Theoretical and Methodological Considerations toward an Anthropological Study on Peace.Journal of the Graduate School of Letters, Hokkaido University. Vol. 2: 1-16.)に引き続いて、市民社会論、資源論、平和構築論、和解論などと関連付けながら文献調査を行ない、平和に人類学的にアプローチするための理論的・方法論的枠組みの開発を進めた。こうした研究の結果を二つの学会(日本文化人類学会、日本平和学会〉において発表した。 平成20年3月にドイツでの現地調査を実施した。主にNGO「行動・償いの印・平和奉仕」を対象とした。このNGOは1954年に設立されたキリスト教系の組織であり、ナチの戦争犯罪に対する反省から戦後和解を目的に活動してきた。まずベルリンの本部オフィスを訪れて、このNGOが発行してきたニュースレターのバックナンバーとその他出版物を講読、収集した。さらにスタッフとのインタビューも行なった。加えて、「償いの印」の社会的・歴史的コンテクストを理解するための文献収集を行なった。 この予備調査の結果、和解の実践において(戦争被害を与えた)他者とどのような関係性が再構築されるのかという問題が重要なものとして浮かび上がってきた。これについては次年度に研究を深める。
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