平成20年度は、前年度に引き続き、我が国の青少年のライフスタイルや価値観、動機付けの機会などを含め、その成育環境をトータルにとらえるための調査を継続するとともに、主として日本における学校教育の問題を論じた研究成果に関する文献を購入し、その内容を検討した。 また、「学力低下」問題とはあくまでも表面的にとらえられる現象に過ぎず、根本的な課題は、現代の青少年たちの一部に広がり始めている、学校教育に何も期待せず、社会にもあまり期待しないような風潮を正確にとらえ、その背景や原因を分析することである。そのためには、単に社会制度や教育制度に関する批判的検討をおこなうだけでは不十分であり、従来以上に、青少年のライフスタイルや価値観、動機付けの機会などを含め、その成育環境に関する信頼に足る質的資料の収集が重要であることが再確認された。また、学校教育と自身の将来に希望を持てずにいるのは、従来「落ちこぼれ」と称されてきたような青少年に限らないことも判明しつつあり、これがどのような原因によるものなのか、精査が必要である。したがって、次年度も引き続き、今年度までに実施してきた現地調査を継続し、これらの問題の背後に潜むさまざまな要因を分析していくことになる。そのうえで、ここから得られた知見を、教育学や社会学などで議論されている「学力低下」問題と交差させていかなければならないが、これらは、次年度に向けての課題となる。
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