文献および現地調査により、親子関係の問題、とくに代理母および嫡出推定の問題の検討を行った。嫡出推定の問題については、日本の実質法が「父」死亡の場合、離婚による婚姻の解消の場合、婚姻の取消・の無効の場合などを同一のルールによって規律しているごとが、現在の状況にマッチしていないことが明らかとなった。諸外国においては、状況に応じた別個のルールによっている。このような実質法の相違が抵触法的な問題をも惹起している。今後はさらに、比較法的な調査および検討を行い、問題の本質をより精査する。代理母の問題に関しては、代理母を禁止している国、代理母を許容している国、いずれかともいえない国がある。それぞれに属する国のいくつかに赴き、実態調査などを行った。基本的に、アジア諸国の態度は未だよくわからない。代理母を禁止しているスイスおよびドイツにおいては、その国内においては当然禁止であるが、代理母を許容している国において成立した代理母関係を承認することについては、必ずしも公序に違反するものではないとい意見がかなりあった。これに対して、代理母を禁止しているフランスにおいては、日本の最高裁と同じく、外国において成立した代理母関係の承認は公序に反するとされている。アメリカ合衆国のいくつかの州は代理母を許容している。アメリカ大陸の諸国の態度は必ずしも明らかではない。OAS(Organization of American States)の国際私法担当者によると、南米諸国においては、禁止されていると考えてもいいのではないかということであった。そのため、各法域間で相違が生じ、国際私法の問題も生じ得るが、できればOSAの条約などの枠内では将来的にも検討したくはない、ということであった。 ヨーロッバおよびアメリカにおける調査が昨年度末にずれ込んでしまったため、なお耕究成果の公表には至っていない。早急に調査結果をまとめて、公表する予定である。
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