文献および現地調査に基づく研究を行った。前年度はいわゆる代理母に関する比較法的な調査を行った。その資料の整理からはじめて、近未来における親子関係法制のあり方の可能性を確認した。基本的に、誰を法的に子の父とするか、子の母とするか、が問題解決の出発点となると考えられる。周知のように、母に関しては、産んだ女性か遺伝子的なっながりのある女性か、という2つの可能性に絞られる。当面は、子を産んだ女性を子の母としつつ、例外を認めるかどうか、に議論が集約されることになると推測される。他方で、父に関しては、従来通り問題の解決は容易ではない。婚姻を父の擬製のための制度として利用しない理由はない。他方で、婚姻を基礎とし得ない場合に、いわゆる任意認知を存置すべきかどうかが1つの問題として取り上げられるべきと思われる。このようないわゆる血縁に基づく親子関係を補充する、あるいは代替する制度として養子縁組があり得る。血縁による親子関係の確定が常に疑問を残すものになるとすれば、意思を重視する養親子関係の将来に着目されるべきであろう。実質法のあり方として上記の観点からの将来が想定されえる。これを抵触法に反映させるとどうなるか、も問題となる。このような観点からいくつかのモデルを作成し、アメリカ合衆国ワシントンDCのOASなどで意見交換を行った。偶然にも、アメリカ合衆国政府の主催する研究会にも参加することができ、私の作成したモデルについて、様々な批判・意見をもらうことができた。
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